新アクロポリス博物館は、先月6月20日に著名人や各国の要人などを招いて、華々しくオープニングセレモニーが行われたのですが、この日は、正にギリシャの歴史に残る大切な記念すべき日。実は、この待ちに待った晴れの日を迎えるまでには、苦難の歴史がありました。

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(最上階のガラス窓には、アクロポリスにあるパルテノン神殿が写っているのが分かりますか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化省大臣であるサマラス氏の言葉の通り、ギリシャの独立から188年、コンスタンティノス・カラマンリス首相がこの地に新博物館を建設すると決定してから33年、メリーナ・メルクーリ(元女優で、後、文化省大臣)がエルギン・マーブルの返還をイギリスに要求し、その夢の実現に向けてキャンペーンを行ってから27年、アクロポリスの新博物館はギリシャの悲願でした。アクロポリスはギリシャの誇り。そのシンボルとなる博物館は、単なる建物ということではなく、ギリシャの理想、価値観、アイデンティティー、精神、威信を賭けての大事業だったのです。今まで丘の上にあった小さな旧博物館では、大切な文化遺産を全部展示することもできず、ギリシャのパルテノン神殿の彫刻群(通称エルギン・マーブル)をたくさん所蔵している大英博物館にその返還を求めても、「ギリシャには、貴重な彫刻を展示・管理できる場所もない」と一蹴されていたのです(涙)。

 

1976年に新博物館の建築に踏み切ってからも、建築の入札は難航し、建築中に新しい遺跡が見つかったり、立ち退き問題で裁判になったりで工事も遅れに遅れ、2004年のアテネオリンピックに間に合わず・・・これは本当に残念でした。オリンピックが過ぎてしまえば、さしあたって急ぐ必要もないか・・・という感じで、いつ開館するのかと気をもんでいたので、この夢の実現は、ギリシャ人でない私にとっても、本当に感無量です。

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有名なスイスの建築家ベルナール・チュミ氏等が設計したこの新アクロポリス博物館は、遺跡とは対照的な現代的デザイン。展示物が主役になるようにと建築物の無駄を排除し、わざと無機質な雰囲気にしているような印象を受けます。コンクリートとガラスを多用し、自然光を重用視して、展示彫刻をできるだけ美しく見せる工夫がなされています。建物の下で発掘された遺跡も、ガラス張りの床にして見学できるようにしたのも、なかなかのアイデアです。総床面積は25千平方メートルで、手狭な旧博物館に比べ、展示スペースは約10倍もの広さ。建築費用はなんと13千万ユーロ(約175億円)で、正に国家一大事業!その夢にかけた意気込みを感じます。

 

さて、博物館の構成ですが、下記のようになっています。話題のスポットなので、相当混んでいるかと思いましたが、私が訪れた平日の午前中は、ツアー客が到着する時以外は、割合ゆったりと見られました。

 

グランド・フロア:カフェ、ミュージアムショップ、シアター、クローク

アクロポリス・スロープ ギャラリー (アクロポリスの丘 岩壁

斜面からの発掘物)

 

1階(日本でいう2階): アルカイック・ギャラリー 

   (紀元前7―5世紀、アルカイック期の彫刻)

 

プロピレア(前門)、アテナ・ニケ神殿、エレクティオン

からの発掘物、彫刻

紀元前5世紀〜5世紀の発掘物

 

2階: カフェ、ミュージアムショップ

 

3階: シアター

パルテノン・ギャラリー 

(パルテノン神殿の破風・メトープ・フリーズの浮き彫り彫刻)

 

たくさん写真を撮ろうと意気込んでいたのですが・・・3階以外は、フラッシュなしでも撮影は禁止されていていたので、残念ながら写真のご紹介はできません。3階のパルテノン・ギャラリーだけはフラッシュなしでの写真撮影が可能です。放送でも何度も注意が流れていましたし、警備員も見張っていましたので、ご注意下さい。

 

古代より、アクロポリスは市民の信仰の対象で要塞でもあり、様々な神殿や神域があり、その周りに街が形成されました。1階にあがる最初のスロープでは、アクロポリスの周囲にあった街や神域の遺跡から発掘された、紀元前のアテネ市民の日用品や、アクロポリスへの奉納品、神域からの発掘物が展示されています。下のガラス張りの床からは遺跡が見えるので、昔のアテネの街並や市民の日常生活の様子を想像しながら歩くのが楽しいです。ひときわ目を引くテラコッタのニケ(勝利の女神)像2体(1−3世紀)は、大変保存状態も良く美しいです。

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スロープをのぼりきった1階(日本でいう2階)は、アルカイック・ギャラリー。天井の高い明るいスペースに、柵もなくガラスケースにも入っていないお宝の彫刻が惜しげもなく展示されており、至近距離から細部を鑑賞することができます。でも、くれぐれも展示物には手を触れないように!これらの彫刻の多くは、神・神殿・神域への奉納品で、奉納した人の名前や職業が書かれていたりします。壁際に一列に並べるのではなく、広い展示スペースの真ん中に点々と作品を配したこの展示方法は本当に素晴らしいと思います。彫刻の後ろ姿、横からの姿、衣服のドレープの細部、編んだ髪の毛や体の細部、昔の彩色を彷彿とさせる模様など、貴重な彫刻の細部を、色んな方向からくまなく観察することができ、「神への奉納品は完璧でなければいけない」、という当時の哲学を実感します。また、全面ガラス張りの室内なので、時間帯によって微妙に変わる自然光の中での陰影の鑑賞も、別の楽しみと言えそうです。

 

ここの見所は、アルカイック期(紀元前7−5世紀)の彫刻。コレーと呼ばれる美しい乙女像の数々、青年像、アテナ像、「仔牛をかつぐ青年」など、どれも悠久のバランス美にあふれています。「カリアティデス」と呼ばれるエレクティオンのポーチに立っていた少女像のオリジナル(パルテノン神殿にある像はコピーです)、ヘラクレスの破風彫刻等もこの階で見られます。

 

続く・・・ 

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